三度の飯より授業が好き

生徒の学力向上に真正面から挑む塾講師の勉強ブログ

【読書】勉強法が変わる本 心理学からのアドバイス 市川伸一

【教科書の用語を説明してみる】

自分がわかっているのか、いないのか、どうももやもやしているというときに、説明できるかどうかでチェックしてみるというのはすごく大切な勉強法だ。

自分で練習や確認をするときに「用語集」として使えるのは、教科書や参考書の索引である。索引の用語を見て、「説明できるかどうかあやしい」と思ったら、本文の解説を読み直してみよう。説明させるような問題はテストに出ないからといっていいかげんにしていてはいけない。定義や具体例を通じて意味を理解しておくというのは、問題を解くための大前提だと考えてほしい。(P.74~75)

☞日頃生徒にアドバイスしていることがそのまま書かれていた。数学や理科は、「問題を解くこと」が勉強だと思っている生徒は多い。そういう生徒に限って、教科書の内容がきちんと身についておらず、結果的に効率の悪い勉強になってしまっている傾向がある。

伊沢拓司氏の「勉強大全」にも説かれていたように、基礎=教科書に載っていること。

教科書を「使う」ことは、繰り返し指導したい。

 

【文章理解には知識と推論が必要】

文章理解に使われる知識とは、まず第1に語彙や文法などの言語的知識である。少しかたい文章を読むためには、それなりの難しい言葉を知っていなくてはならない。

(中略)

認知主義の立場に立つと、人間が新しい情報をとりこむためには、あらかじめ何らかの枠組みが必要である。決して、白紙の状態に書き込んでいくようなものではないのだ。

(中略)

このような枠組みとなる知識が、スキーマである。スキーマを持たない人や、もっていても呼び出しに失敗した人には、文章が理解できないということになる。語彙と文法という言語的知識だけでは、文字通りの事実しかわからず、文章についての内容的な質問にも答えられない。

ここでぜひ、知っておいてほしい用語は、ボトムアップ処理トップダウン処理である。ある形の文字をみて、「これはAだ」とわかるときに、対象の持っている線分や角の特徴を分析していって、だんだんと候補をしぼり、「アルファベットのAに違いない」と認識するやり方をボトムアップ(下から上へ)処理という。いわば、無心に、淡々とデータを積み重ねて結論を出していく方法である。

これとは反対に、「CとTの間にあるからたぶんAだろう」というように、期待、予測、仮説などをもって、認識する方法をトップダウン処理というのである。幽霊が出ると思っていると、なんでもないものまで幽霊に見えてしまうのもその好例である。

人間は、この両方をうまく使いながら自分のまわりの世界を認識して情報を取り入れている。(P.91~95)

☞伊藤敏雄先生の本から「読解=文章に書いてあることを構造化して理解すること」と学んだが、ここではその読解を認知科学的に説明している。

理科の問題を解く際に、

①まずは実験の図を見る

②次に「問題文」を見る(実験の説明文ではない)

③最後に「実験の説明文」に問題を解くのに必要な情報を探しに行く

という読解の手順を教えるようにしているが、これは認知科学的に言えば、図や問題文から使うスキーマを判断し、それをもとに実験文を読むという行為になる。

理科において知識を身に着けるということは、このスキーマをいつでも引き出せる形で保持しておくことに他ならない。

 

【問題から教訓を引き出す】

ぼくが大切だと思うのは、与えられた「チャート」や「鉄則」がなくても、そのようなルールを問題を解くごとに自分で作り出す経験を踏むことだ。これは、とくにうまく問題つgが解けなかったときにこそやってほしい。つまり、「なぜ、自分はうまく問題が解けなかったのか」「この問題を解くことによって何がわかったのか」という「教訓」を、問題から引き出すということである。(P.134)

☞授業で問題を解説する際は、問題を解く際の着眼点やルール、鉄則を教えることを意識するが、それを生徒自身が自力でできるようにしていく視点はこれまであまりなかった。与えられた気づきよりも、自分で見出した気づきの方が身に付きやすいことは、経験上身に覚えがある。

問題の間違い直しを指導する際、初期の段階では「間違えた原因」「どんな工夫をすれば正解にたどり着けるか」を書かせるフレームワークを与えてみるのもいいかもしれない。

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著者の体験や認知心理学の知見をもとに、勉強法の原理原則を説いている。高校生向けということで、説明は分かりやすいが内容は本格的。

生徒の学力向上を目指す上で、認知心理学認知科学)は強力な土台になることを改めて認識した。

学習指導力認知心理学認知科学)×縦横の教科知識×問題分析×経験&反省

この他にも要素はありそう。図で整理してみよう。

 

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