三度の飯より授業が好き

生徒の学力向上に真正面から挑む塾講師の勉強ブログ

【読書】教師の話し方 多賀一郎 佐藤隆史

【発声のメカニズム】

「話す力」の一番の土台のようなものは何かと言えば、それは「声」です。確実に声を届けるということです。確実に声を届けることなしには教室で教師の役割は果たせません。そのために、自分の声を知ることがまず大切です。

自分の声を知るということはどういうことなのでしょう。それは、呼吸、姿勢、共鳴、口形、滑舌といった「発声」のメカニズムを知り、その声がどのように目の前の子どもたちに届いているのかを知ることです。(P.17)

☞「声を大きく出せ」「腹から出せ」云々は声についてよく聞かれるアドバイス(?)だが、どのようにすれば届く声を出せるのか、ここで説かれているような発声のメカニズムに基づいて科学的に指導を受けたことは、今の今まで一度も無かった。声で勝負する歌手や声優、アナウンサーほどでなくても、日常的に話し伝える仕事をする教師が、こうした訓練を受ける機会が無いというのは、よくよく考えてみれば由々しきことではないだろうか。

 

【呼吸】

若い教師の授業を参観すると、その声が子どもたちに届いていないケースを観ることがあります。まず、物理的に音量が小さくて届かないというケースです。その原因は息が浅いからです。声は喉の声帯を震わせて、その微かな音を身体の色々な部分で共鳴させながら声にします。その微かな音の元になるのが「息」です。たっぷりと吸った息をコントロールしながら吐く。その息を声に変えていくのです。その「吐く息」の量が少ないと十分に声帯を震わせることはできません。しっかりとした呼吸で、余裕を持った息遣いと、たっぷりとした声量が確保されたとき、教室の隅々まで「声を届ける」ことができるのです。

(中略)

たっぷりとした声量を確保するためにここでは腹式呼吸の方法をマスターしていきましょう。最初は、息をたくさん吸い、お腹の(実際は横隔膜なのですが)下のほうを下げる意識で溜め、ゆっくりと声を出すようにするといいでしょう。この「たくさん吸って」「ゆっくりと吐き出す」という息のコントロールができるようにするためには、2拍で吸って、2拍そのまま止めて、8拍で吐いていくというトレーニングをします。吸った後に止める長さは2拍から5拍くらいまで伸ばしてもいいでしょう。鼻から吸った息をお腹の下の方に入れていく感じで吸い、止めている2拍のときは、お腹で支える感じです。そして、8拍でバランスよく吐き出し(吐き切り)ます。この吐く8拍を、12拍や16拍にして吐く息のコントロールを身体に覚えさせます。吐くときは、上の歯と下の歯の間に少し隙間を作って、その間から「スーーー」と息だけを均等に吐いていくのです。(P.19~りゃく20)

☞声を出すときの呼吸はまったく意識していなかった。「息が続かなくなる」ということはよく聞くが、それは息が浅いからだったのだ。具体的なトレーニングも提案されていて、ありがたい。

 

【姿勢】

声を出すときの発声器官は、喉と口だけではありません。身体全体が発声器官です。そう考えると、声を届けるためには姿勢はとても重要なのです。(中略)

「足の裏!…ピタっ!」両足の裏側を床にピタっとつけることを意識すると、下半身が安定します。膝は柔らかくしておき、あまり力を入れないようにします。子どもたちには「足の裏全体からエネルギーをいっぱい吸い取る感じで」と言って指導します。子どもたちの前に立つ教師としては、両足に体重を乗せて、両足の間は少し開いておく立ち方をおすすめします。「休め」の姿勢や、片足に体重をかけすぎて斜に構えた姿勢では、声に力がこもりません。人の前に立って話すときの姿勢で最も大切なのは、下半身が安定していることなのです。

片足に体重をかける姿勢は、無意識のうちによくやってしまっていた。(ひどいときには壁に寄りかかることも…)正しい姿勢で立つことを習慣づけたい。

「腰骨!…ピッ!」私のもう一つの癖は「猫背」でした。いまも意識をしなかったら、背中は丸まってしまうのですが、あるとき「立腰」という言葉に出会いました。背筋を伸ばすのもいいですが、それより腰骨を立てるという意識のほうが、どっしりと落ち着きのある声が出ます。お腹よりも腰に意識が行くことで、自然と腹式呼吸に近づいていきます。腰骨が立っていると、何も邪魔されないでまっすぐに声が出てくる感じがします。

☞「立腰」は国民教育の父・森信三先生も、躾の眼目の一つとして挙げられている。身体に負担がかからない姿勢であると説かれていたが、声にも影響するようだ。

「肩は!…ストン!」下半身はどっしりと安定させ、上半身は力を抜くようにします。特に肩や首に力が入ると疲れてきますし、豊かで響く声になりません。力が入りそうな体の部分をいかに脱力できるか、これは肉体訓練です。合唱団の団員は、オペラ歌手、舞台俳優などの人たちは、毎日体の余分な力を抜く訓練を積み重ねています。話す力をつけたい私たち教師も、声を届けるためにそうありたいものです。

☞緊張すると、肩や首に力が入る癖がある。授業後にどっと疲れるのはそのためだろうか。ここまで見てきて、いかに自分が体の使い方が下手なのかがよく分かる。

「目は!…まっすぐ前!」下を向くと喉が閉まってしまいます。また、目は口ほどに物を言います。まっすぐ前は、子どもたち一人ひとりをくまなくまっすぐに見るということです。そうすることで、声だけでなく言葉や思いも届くのです。声を届けるだけでなく、思いや気持ちも届けるには目線や身振りは欠くことのできない要素なのです。(P.21~24)

☞下半身の安定、上半身の脱力、目線。意識すべきポイントが具体的に分かってきた。授業前の時間を使って、ウォーミングアップの習慣をつけたい。

 

【共鳴】

ハミング(唇を閉じて「m~」と声を出す)をして、鼻の頭や鼻筋を触ってみます。振動しているのが分かるでしょう。そして、もっと鼻を震わせようとしてみてください。すると鼻がくすぐったいような感じになると思います。鼻の奥から目や頬のあたりは空洞があり、その隙間を「鼻腔」といいます。そこが振動して響くのです。これを鼻腔共鳴と言います。他にも響く(共鳴する)場所がたくさんあります。口、頭、喉、胸などです。この場所をそれぞれ触りながら「響かせよう!」と意識してハミングしてみてください。声は声帯が上下左右に振動して出るものですが、声帯の振動だけでは全くと言っていいほど届きません。ごくごく小さな音なのですから。声帯で作られた声の素を身体の各所で響かせることできちんとした「声」になるのです。(P.26)

 ☞体の空洞を用いて、響かせるという意識もまったく無かった。ハミング法は練習に取り入れてみよう。

 

【滑舌をよくする発声・発音練習】

アイウエオ アエイウエオアオ オエウイア

カキクケコ カケキクケコカコ コケクキカ

(…以下ワ行まで続く)

 アナウンサーや劇団員たちも普段から息をするようにやっている練習です。私は通勤に自転車を使っていますが、通勤の自転車を漕ぎながらやっています。ときどきボイスレコーダーに録音して聞いてみると、自分の苦手な行が分かります。聞くまでもなく、発音しにくい行はあるものです。息のコントロールが苦手な人は「ハ行」が、唇が滑らかに動かない人は「マ行」が苦手という人が多いです。深く考えることなど何もいらない単純な練習ですが、毎日繰り返していると、効果が実感できます。(P.32~33)

☞授業で舌が回らない時がある。後半になるにつれてだんだんと乗ってくる。また、2コマ目の授業ではわりと舌が回りやすい。話しているうちに、だんだんと舌が”温まって”くるのだろう。であれば、こうした発声練習でウォーミングアップをしてから臨むようにしたい。

 

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今までいかに無理やり声を出していたのかが、よく分かった。

①下半身を安定させ、上半身を脱力する姿勢を取ること。

②「声の素」を大きくするだけではなく、それを響かせるようにすること。

③発声練習で舌が回るようにすること。

 

どれも意識すれば、今日から実践できそうなことばかり。

さっそくやってみよう。

 

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