三度の飯より授業が好き

生徒の学力向上に真正面から挑む塾講師の勉強ブログ

【読書】中学生の「間違い直し勉強法」 伊藤敏雄

【答えを書き込んでもできるようにはならない】

問題集を解いて答え合わせをするときに、間違えた問題は赤ペンで答えを書き込む人がほとんどのようです。

多くの中高生がこのように問題集を解いていますが、これって正しい勉強法でしょうか?実際のところ、これには何の学習効果もありません。

では、実際にできるようになるにはどうしたらよいか。それは、自分で解けるようになるまでやり直す以外に方法はありません。つまり、間違い直しをするのです。

(P.32~33)

☞「間違い直し」を、「書き直し」だと思っている生徒は実際のところ頻繁に見かける。入塾生のほとんどが、これに該当するのではないかと思うほど。

酷い例になると、問題集に赤で直接答えを書き込んで、それで勉強したつもりの生徒もいる。(後で解き直すことが不可能になる)「わかったつもり」「できたつもり」を生むだけだが、根気よく指導しないとなかなか直らない。

私は宿題チェックの際、提出してきた生徒の目の前でチェックするようにしているが、「これはなぜ間違えたの?」「どうしたら正解できる?」というWhy⇒How型の問いかけを必ず行う。

生徒が正しい間違い直しができるようになるためには、こうした日常的な指導が不可欠だと感じる。

 

 【間違い直し勉強法 ①問題集を読む】

問題集を解くときに注意すること。それは、わからない(解けないかもしれない)問題だけを何度も解いた方が効果的だということです。

そのために、まずしなければいけないことは、わかる問題とわからない問題を仕分けする作業です。

・わかる問題=正解が言える問題

・わからない問題=正解が言えない問題

でも、わかる問題とわからない問題をどうやって区別したらよいでしょうか。それは簡単です。答えを言ってみて、正解が言えるかどうかを確認するだけです。これを「問題集を読む」と呼んでいます

 一問一答形式の問題か、( )埋め問題から始めると良いでしょう。横に解答冊子を用意して、問題文を読んで答えを言ってみます。そして、合っているかどうかをすぐに解答で確認します。合っていれば次の問題に、間違っていたら答えを言えるようにしてから次へ進みましょう。

あとはこれを繰り返すだけです。

「間違い直し勉強法」の最初のステップは、たったこれだけです!(P.50~51)

☞理科や社会のように、語句を覚えるところから始まる教科では、かなり有効な方法かもしれない。成績のなかなか上がらない生徒を見ていると、穴埋め問題は一度解いたきりで、その後は放置というケースが多い。ちょうど塾で扱っているテキストが、語句の穴埋めから始まるようになっているので、この取り組み方を生徒に教えておきたい。

 

【間違い直し勉強法 ②実際に「解く」】

問題集を読んだら、次にいよいよ問題集に答えを書き込んで、実際に解いてみます。

このときにたった一つだけ注意点があります。

それは先ほどとは違い、解答はもちろん教科書や要点のまとめなど、ヒントになるようなものを一切見ずに解くことです。 

それは、テストと同じ状況をつくって解くためです。(中略)

では、なぜ「読む」ときは答えを見ても良かったのか?

わからない問題は、ちょっと意識すれば解ける問題と、しっかり復習しないと解けない問題の2種類に分けられます。

ちょっと意識すれば解ける問題は、答えを見るだけで復習できます。しかし、しっかりと復習しないと解けない問題は、問題集を読んだだけでは復習できません。

でも、問題集を「読む」段階では、それでかまいません。ただし、次のステップ「直す」ときに、じっくり時間をかけて間違い直しをしましょう。

問題集を一度読んでから解いたほうが、いきなり問題集を解くよりも正解が増えるはずです。正解が増えれば、やる気や自信につながるはずです。(P.52~53)

☞数学や理科の思考系の問題などは、この「解く」段階が重要になる。最初に読んだときは「解答を読む前に、自分で頭を悩ましながら解き方を検討する場面が必要なのではないか?」とちらりと思ったが、それは基礎が完成してからの話。解き方の道筋が見えない問題を前に延々と悩んでいても仕方が無いし、何よりそれでは勉強嫌いを生んでしまう。最初の段階では解答への道筋が思い浮かばなければ(あるいは間違っていたら)、すぐにインストール及び修正することが大切なのだ。そしてその後の「解く」場面では解答を見ずにそれが自分で「再現」できるかどうかを試す。その繰り返しで、できなかった問題が、できるようになっていく。

 

【間違い直し勉強法 ③間違いを「直す」】

問題集を解いたら、答え合わせをします。

間違えた問題は赤ペンで答えを書き込まずに、✔印をつけるだけにしましょう。また、このとき、間違っているのに〇をつけないように注意しましょう。

そして、1ページ解いたらすぐ答え合わせをするようにしましょう。何ページもやりっぱなしにしないことが重要です。

間違えた問題は、わかっていない問題なので、もう一度解かないとできるようになりません。赤ペンで答えを写しても、なんとなくわかったつもりになるだけなので注意しましょう。(P.54~55)

☞体感では、自力で解答が導き出せるようになるまでに、3回は解き直しが必要。間違えた問題だけを繰り返し解き直す「直しノート」を用意させるなど、工夫したい。

 

【間違い直し勉強法 ④答えだけでなく問題文や注意点も書こう】

数学の場合は、間違いの多くは計算間違いなので、式と途中の計算式も丁寧に書くようにします。色ペンを使って「符号が変わる」などの注意点を書き込むのもいいでしょう。

理科や社会、英語、国語は、必ず問題文と答えをセットで書きます。答えだけを書いても何をどう直したのかわからないからです。

また、記号で答える問題も、記号だけでなく答えとなる文章や語句も書き込むようにしましょう。

例)

2.(1)鎌倉幕府で、将軍を補佐する役職は何か。次のア~エの中から選びなさい。

     ア.主語 イ.老中 ウ.管領 エ.執権   A.エ 執権

      老中➡江戸時代、管領室町時代

老中は江戸時代、管領室町時代など、解説も書くようにしましょう。(P.58~59)

☞ここがまさに根気よく指導したいところ。中3になっても、答えを書き写すことを「間違い直し」だと思っている生徒は多い。日ごろの宿題チェックで指導を繰り返すほか、適切な間違い直しの例を、折に触れて紹介していきたい。

 

【読解力を高めるには、「要するに○○」と一言で説明してみる】

読解力とは、文章に書いてあることを構造化して理解することです。

(中略)

次の文章を読んで、20字以内で要約して(まとめて)みましょう。

ニュージーランドは、面積は日本と同じなのに、人口は約440万人と少なく、日本の3%にすぎません。(20字以内)」

この文章が言いたいことは、「ニュージーランドは日本より人口が少ない」ということです。読解力とは、このように文章の根幹となる「要するに言いたいことは何か」を理解する力でもあります。

読解力を高めるのに最適な方法は、このように「要するに○○」と説明してみることです。これを「○○字要約」と呼んでいます。早速試してみましょう。(P.160~163)

☞「要約を繰り返していたら偏差値が10上がった」という例は、身の回りでもよく耳にする。

理科の問題においても、問題文で「要するに何か問われているのか」が掴めないために解答できない例や、まさに「要するにどういうことか」説明する記述が書けない例は頻繁に見かける。

教科書の記述の要約を、1年間課題として続けてみたら、かなり力がつくかもしれない。

 

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学習法・勉強法の本はこれまでも何冊か読んできたが、ここまでシンプルかつ合理的な方法論を説いた本は初めて読んだかもしれない。説かれているエッセンスは自身の経験ともよく符合している。

教師として知っておきたい残酷な事実は、「授業だけでは成績は上がらない」ということ。(もちろん、「だから授業は適当でいい」ということではない)

授業でいかに分かりやすく、ポイントを感動的に伝えたとしても、それを使えるようにトレーニングをしなければ、学力向上は実現しないのだ。

授業にこだわるあまり、生徒が日頃どうやって勉強しているかに意識が向けられていなかったのではないか。反省することしきりである。

 

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【読書】子どもがつまずかない教師の教え方10「原理・原則」 伊藤敏雄

【ARCS(アークス)モデルで授業をデザインする】

ARCSモデルというのをご存じでしょうか。ジョン・ケラーという人が提唱した動機づけモデルです。注意(attention)、関連性(relevance)、自信(confidence)、満足(satisfaction)の4つで構成されています。

 

板書をすると、子ども達は板書を写すことに精一杯で、重要なポイントを聞き逃すことがよくあります。ノートに写すのに時間がかかり、板書を写すことが目的になってしまうのです。

しかし、スライドで表示すると、ノートを取るとか他のことをする機会が格段に減ります。子ども達は「今日はどんなことをやるんだろう」と意識的にスライドを見るようになるのです。この方が、子どもは授業に集中できるのです。

注意とは、このように授業や学習内容に集中できるようにするための「しかけ」である必要があります。(P.46~47)

☞勤務している塾でも、写す手間を省くためにあらかじめ板書の内容が記された穴埋めノート教材が使われる学年がある。(ただ、穴埋めにする箇所にセンスがない)

内容はともかく、生徒の注意を内容に向けやすいという意味では、活用できる工夫かもしれない。

 

【算数の読解力は「精緻化」」「要約」「例示」で伸ばせる】

「精緻化」とは、詳しい情報を付け加えることです。

例えば、時速〇Kmとは、1時間に〇km進むという意味です。時速60kmだけでは、子どもは道のりと勘違いしている可能性もあります。このような速さという単位の意味がわからないので、子どもの多くが、読み飛ばしをしているのです。ですから、算数でも言葉の意味を丁寧に説明して、理解をうながす必要があります。

 

「要約」とは、算数の文章題で、問題文か何を問いかけているかを読み取ることです。

例えば 、4年生で何倍でしょうという単元があります。このような文章題で大切なことは、関係性を簡潔に読み取ることです。要するに、「~は…の何倍か」を読み取れば良いのです。「~は…の何倍か」を意識して読み取るように意識して働きかけないと、子どもは数字だけをつまみ読みして、数字と数字の関係性まで読み取ろうとしないのです。文章の量が多すぎて読み取れないと言った方が正確かもしれません。

 

「例示」とは、わかりやすい数字に置き換えることです。

例えば、「5/7Lで2/3㎡の壁を塗れるペンキがあります。このペンキ1Lでは何㎡の壁が塗れますか」という問題があったとします。これは出てくる数字が分数で、イメージしづらいので非常に難しい問題です。しかし、「2Lで2/3㎡の壁が塗れる」という問題だったらどうでしょうか。このように、いったん、簡単な数字に置き換えて説明することで、わかりやすい説明になるのです。

 

以上のように、文章題はただ読ませるのではなく、何をどのように読み取れば良いのかねらいをはっきりさせて読み取る練習をすることが大切です。そうすることで、算数でも読解力を伸ばすことができるのです。(P.57~58)

読解力=文章に書かれていることを整理し、理解する力。重要なのは、整理をどのように行うかということだが、ここではその具体的方略を指摘している。

精緻化を促す問いかけ➡例)「〇〇って、つまりどういうこと?」

要約を促す問いかけ➡例)「この文章で重要な箇所はどこ?」

例示を促す問いかけ➡例)「簡単な数字に置き換えると?」

最初は教師が模範を見せつつ、段階的に問いかけを用いることで徐々に生徒が自分で読解できるよう育てていくことができそう。

 

【「テスト効果」で学習効果を最大限に】

認知心理学で、テスト効果(Testing Effect)と呼ばれるものがあります。小テストをしたり問題を解いたりする方が学習効果が高いことです。いわゆる問題演習は立派な学習法なのです。

(中略)

テストや問題演習を行ったら、必ず「答え合わせ」と「解き直し(間違い直し)」をすることが大切です。特にまちがえた問題の扱いはマインドセットの観点からも重要ですし、答え合わせはフィードバックに、解き直しはメタ認知をうながすために欠かせません

(中略)

「わかる」というのはじわりじわりと効いてくるので、たった1回、解説をしたり、赤ペンで答えを写したからといって、「わかる」ことはまずありえません。

授業も同じで、1回のドラスティックな授業をやったからといって、子どもに何かが身につくということはまずありえません。

特に算数では、概念的な理解や思考よりも、まず、手続き的な知識や技能の習得が重要な教科です。実際に問題を解いたり、まちがえた問題を解き直したりしない限り、身につく力も身につかないのです。(P.77~78)

☞語句の空所補充問題のように、憶えている知識を出力するだけの問題であれば、テスト後に直ちにフィードバックを行うことを繰り返すことで正確に記憶していける。

しかし、算数の文章題のように読解や判断といった思考を伴う問題では、解けなかった問題のどこで躓いたのか、そもそも解き方が見えなかったのか、見えていたが読解でミスをしたのか、立式の段階でミスをしたのか、計算の過程にミスがあったのか・・・こうした「間違い直し」、そして自力での「解き直し」が不可欠になる。

理科の難しいところは、知識系の問題と、思考系の問題が混在していること。(単元によっても、その比重が異なる)それぞれの出題形式に対して、適切な学習方法を意識的に指導する必要がある。

 

【□を使った式で解き方を見える化する】

「サッカー部の入部希望者は40名で、これは定員の1.6倍にあたります。サッカー部の定員は何名でしょう。」

・□の式を使った割合の解き方の例

わからないものを□として、いったん□の式で考える

□×1.6=40

□  =40÷1.6=25

 

まず、「何は何の何倍なのか」を読みとる必要があります。それを式で表す前に、いったん言葉の式で書き出してみる(要約)することが大切です。(P.160)

☞理科の表やグラフの読み取りでも、まず数値の関係性を書き出してみるよう指導することが多い。たとえば、「1.0Aの電流が流れるとき、5分間で4.2℃温度が上昇する電熱線Aがあるとき、2.5Aの電流が流れると5分間で何度温度が上昇するか」という問題であれば、

(例)

   1.0A - 4.2℃

 ×2.5 ↓    ↓×2.5     

   2.5A  - □℃

 

□=4.2×2.5=10.5

 

以上のように、表として関係性を書き出すとどのような計算をすればよいかが一目瞭然となる。比例関係が成り立つ際は、ほとんどの場面において使える方略であるため、あらゆる単元で指導してきたが、理に適った方略と言えそう。

 

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かつて「分かりやすく興味関心を惹きつける授業をすれば、それで自然に成績は上がる」と思っていた時期があった。私が師匠に倣って理科ネタを追求してきたのはそうした発想に基づいている。その追求の結果、”理科が一番の得意教科になりました”と言い出す生徒が現れたり、アンケートで”以前より理科に抵抗感が無くなった”と答える生徒が大多数を占めたりするなど、確かに一定の成果は得られた一方で、なかなか成績に結びつかない生徒がいることもまた事実だった。

本書に書かれていることは、その理由を明確に説明してくれている。著者の伊藤氏が言うように「1回のドラスティックな授業をやったからといって、子どもに何かが身につくということはまずありえ」ないのだ。

当たり前の話だが、成績を上げるためには、問題が解けなければならない。その問題を解くという行為が、実はさまざまな方略を用いる必要のある複雑な行為なのである。

いわゆる中~上位生は、これらの行為を自然に行っている場合が多い。こうした生徒は、教科に注意を向けさせさえすれば、確かに自然に成績は上がる傾向にある。

しかしながら下位生には、それだけでは不十分で、問題を解くのに必要な方略を指導しなければならない。(本書で説かれている精緻化、要約、例示などがまさにこれにあたる)

思えば師匠も実験・観察「だけ」ではなく、学習システムの構築にも力を入れていた。

ここ2年ほどでそのことに気づいて、授業のやり方を見直してきたが、方向性は間違っていないようだ。 

 

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【読書】授業の腕をあげる法則 向山洋一

【第六条=細分化の原則】

指導内容を細分化することが必要なのである。

つまり、「細分化して、解釈をし、イメージ化せよ」ということである。

子どもには文字として与えるより、映像・音楽として与えよということである。

ただし、国語・算数などの指導では「イメージ化せよ」という部分がかわる。

「細分化して、解釈をして、発問を考えよ」

この場合も解釈の裏返しを発問と考えている人がいるが、それはアマである。

たとえば「電車の運転手さんはどんな仕事をしていますか」というような問いである。これはアマの質問だ。

「電車の運転手さんは笛をふきますが、誰に聞かせているのですか」というように、焦点化して具体化することが必要となる。このような発問の時、子どもは動くのである。

(P.41~42)

☞「スモール・ステップ」ということがよく言われる。指導する内容を分解し、段階的に指導していく原則のことだが、向山さんはその上で「解釈をし、イメージ化せよ」「解釈をし、発問を考えよ」と言っている。

スモール・ステップに分解するだけでは、生徒は授業についてくることはできない。

分解したステップを、生徒に伝わる言葉や図に置き換え(=解釈)、イメージとして、或いは焦点化(=発問化)して”伝えなければ”生徒はステップを進んでいくことはできないのだ。

 

例)「問.無性生殖で世代を重ねても形質が変わらない理由を説明せよ。」

 ①説明に必要な語句を書き出し、そこに文を付け足していく(細分化)

 ②記述する文の「骨格」を見つけ、そこに肉付けしよう。(解釈・イメージ化)

 ③この理由を説明する上で、外してはいけない語句は何?(発問1)

 ➡「遺伝子」「変わらない」

 ④「遺伝子」を修飾する(説明する)言葉を付け足すとしたら?(発問2)

 ➡親から受け継ぐ「遺伝子」「変わらない」

 ⑤理由を説明する文では、語尾に何をつける?(発問3)

 ➡親から受け継ぐ「遺伝子」が「変わらない」から。

 

細分化は、解釈、イメージ化・焦点化(発問化)とセットで行うものと心得たい。

 

【第九条=個別評定の原則】

誰がよくて誰が悪いのかを、はっきりさせてやることが教育で大切なのである。

しかも、どこが悪くて、どのようにすればいいのかをはっきりさせてやることが大切なのである。(P.63)

☞前半の「誰がよくて誰が悪いのか」の部分については、今の時代では配慮が必要なように思うが、後半の「どこが悪くて、どのようにすればいいのか」をはっきりさせることの重要性はそのまま変わっていない。

例えば問題演習の際、典型的な誤答やミスを解説する前に示し、どうすれば正しい答えを導けるか道筋を明らかにすると、同じような誤答やミスをしている生徒はそこに気づいて修正することができる。

そのためには、生徒がどこでつまずいているか、机間を巡って情報を収集することが必要になる。生徒の間を何となく歩くのではなく、情報を取りに行くために歩くという目的を持ちたい。

 

【根拠をもって実態をつかめ】

まず、教室の子どもたちの実態を正確に理解をすること、ここからすべてが始まる。

正確というのは「根拠をもって数値に示せる」ということである。(中略)

たとえば、太郎君、次郎君の二人が引き算でつまづいていたとしよう。しかし、この二人はちがう人間だから、同じようにまちがえるはずはない。そこで、私は次のように聞く。

「太郎君は、どういう引き算はできて、どういう引き算はできないのですか。具体的な例題を示してください。次郎君も同様に、例題を示してください。」

例題を示せるなら、太郎君が「どこの部分でつまずいているか」が分かっているのである。

例題が示せないのなら「漠然ととらえている」のである。

医者が「ああ、どこか痛いのですね」と大ざっぱにとらえているみたいなものである。

さらに、クラスの中で誰と誰と誰がつまづいていると示せないのなら「実態をつかんで

いない」のである。(P.147~152)

☞重要なことだが、意識的に行わないとなかなかできないことでもある。授業中にこれらの診断的行為を的確に行うのは、時間的・労力的に難しいことも実感としてある。

現時点で解決策として思い浮かぶのは、

①誤答をパターン化して、頭に入れておけば把握は早くなる。

②診断のタイミングを決める(問題演習中、宿題チェック中など)

特に、①は日ごろからの積み重ねが必要だと思う。つまずきデータベースのような形で、蓄積していきたい。

 

【授業観察と技量】

同じ授業を見ても、技量のある人はそれなりのものを見るし、技量のない人は大したことを見ることができない。これを多くの教師は錯覚する。自分が見た授業だから、自分はすべて見えていると思い込む。そして、見当外れの批評をする。

他人の授業を批評するということは、批評した人間も批評されるということなのである。技量が低い人が見れば、一般的なこと、どうでもいいことしか見えないからである。(P.180)

☞背筋が伸びる思いがする。「あれども見えず」になっていないだろうか。

 

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大学1年の頃からもう何度読み返してきたか分からないが、「授業・学習指導」の学び直しを始めるにあたって、最初に立ち返るのはこの本しかないと思った。

やはり、新しい発見がある。

細分化の原則は単にスモールステップを謳っているのではないということ。

「根拠を持って数値で示せ」て初めて、実態をつかんだといえるということ。

…etc

最後に引用した「技量のある人はそれなりのものを見るし、技量のない人は大したことを見ることができない」という箇所は、本についても当てはまると思う。

 

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